教師たちははじめて、
「なにをどう教えるか」選ぶ機会が与えられる。
これは自由を意味している。
私たちの戦略はまだ、はじまったばかりだ。
教育テクノロジーの分野で、英国は世界のリーダーたり得る。

イギリス教育相マイケル・ゴーヴ(Michael Gove)のスピーチは、いよいよ終幕を迎える。
彼が主張する変革は、かつて日本で「構造改革」の名で呼ばれ、未だ論じられ続けているもの――「規制緩和」と「自由化」の上にある。学校と教師は自由にカリキュラムを選択でき、生徒にとってベストと思える方法を選択できる。それまで政府の責任だったものを、学校と教師にあずけてしまうのだ。背景にはむろん「英国の教育産業の隆盛」という政治的思惑がある。
批判は多いだろうし、いわゆる「抵抗勢力」も少なくないだろう。だが、ひとつ正しいと思えるのは「教育テクノロジーの発展は早く、政府が追いかけようとすれば時間がかかりすぎてしまう」ということではないだろうか。子どもたちが子どもでいるのは、「今」だけなのだ。
(訳・TENTO 英The Gurdianのスピーチ全文掲載による 元の記事 前の記事

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●オープンソース・カリキュラム

テクノロジーの進歩で、学校のカリキュラム全体も新しく考えなおさなければなりません。

現在はオープンソースの世界です。その世界で、カリキュラムがひとつの決まりきったものであることをどうして受け入れなければならないのでしょうか? 優先度は、もう長いこと変わっていません。カリキュラムは先生の机の上にドンと置かれたままで、たまに中央によってアップデートされます。それでいいのでしょうか?

学校はすでに自分で道を開き、新しいエキサイティングなやり方で教育テクノロジーを用いるようになっています。きめられたICTカリキュラムが存在しているにもかかわらず、あえてそうしているのです。

英国のカリキュラムが満たすべき基本的な要件は、法律で決める必要があります。でも、私たちはテクノロジーをもちいて、その内容を創造的に発展させることができるのです。

スリム化された新しいカリキュラムを超え、新しい教材を作るために、我々はコラボレーションツールとしてのwikiをどうやって使っていけるか考えなければなりません。wikiプラットフォームをもちいれば、今までよりもはるかに洗練されたものを作り出すことができる。その利点を活用するのです。

●これは自由と自律である

これまでのICTカリキュラムを捨て去ること。それは自由を意味します。教師たちははじめて、真に革新的で専門的で、チャレンジングなトピックを扱う機会を与えられるのです。

レディメイドのカリキュラムを使うか、自分たちの学校にあった特別なカリキュラムをデザインするかは、教師が選択します。生徒にとって何がベストか。教師が自由に、フレキシブルに選ぶのです。

教師は、自分が重要だと考える題材に集中することが許されます。たとえば、コンピュータがどう動くか、そのしくみを教えたり、プログラミングの基礎やコーディングを教え、生徒たちが自分自身で試すよう促すこともできるのです。

Raspberry Piプロジェクトは、クレジットカードサイズのシングルボードコンピュータを使って、子どもたちにプログラミングの基礎を学ぶ機会を与える取り組みです。このボードには最小限のメモリしか搭載されておらず、またディスクドライブもありません。しかし、基本的なコンピュータ言語を扱え、表計算・ワープロ・ゲームなどができ、ドングル(コネクタ)をつければWifiにつなぐことができます。値段は16ポンドから22ポンド。これは、まさにこの英国で起きつつある、先鋭的な教育テクノロジーのとてもよい例になっています。Raspberry Piは1980年代のBBC Microがひきおこした興奮を再現するもので、世界中の教育とテクノロジーの専門家から注目を浴びています。

学校は、何を学習するかだけでなく、どう学習するかも選択できます。テクノロジーはカリキュラム全体と統合され、その中に埋め込まれます。

たとえば、地理の授業では、地理学者が使っているような専門ソフトやツールを生徒が使えるようになります。このことで、生徒たちはもっとチャレンジングでおもしろい学習に取り組むことができるのです。また、分子モデリングソフトウェアは科学の学習に多大な成果をもたらすことでしょう。

レディングのアビースクールでは、生物学を教えるのに3Dソフトを試用しています。心臓が弁を通して血液を送り出す様子を操作しながら、リアルタイムに回転させたり傾けたりして見ることができるのです。アビースクールの生物学教師、ロス・ジョンソンはこう語っています。
「3Dテクノロジーのおかげで、たくさんの生徒がそれまで理解できなかったことに気づきました。どれだけの数の女子生徒の理解が深まったか。信じられないほどです」

●この戦略は完成していない。だが情熱を傾けている

テクノロジーが成長し、進化し続けているように、学校でのテクノロジーの使い方も、いまだ成長し、変化を続けています。

自信を持って言えることがひとつあります。
ハイレベルのコンピュータスキルが、今後ますます必要になることです。仕事で、研究で、またパーソナルな日常の中で、若い人はテクノロジーのリテラシーと知識に依存するようになっていくでしょう。

これは私たちの国だけのことではありません。世界のすべての国が、テクノロジーの進歩によって変化するでしょう。そして、私たち英国人は、私たちがもつ素晴らしい財産を使い、教育テクノロジーの分野で世界のリーダーになれるよう努力すべきです。

今日、ここロンドンで、教育ワールドフォーラムの成果を見ました。最高の学習システムから学ぶことがどれだけ重要か。いくら強調してもしすぎることはありません。このイベントのために、はるばるロンドンまで来てくれた方々に感謝したいと思います。

今日ここで発表したテクノロジー戦略は、最終的なものではありません。したがって、融通の効かない、もう変更できないものではありません。青写真もなく、どこにたどり着くかすら見えていないものです。

私たちは旅の方向を定め、最初の数歩を踏み出したにすぎません。まだまだやるべきことはたくさんありますし、コースの年間計画についてもさらに議論を深める必要があります。

今日、schoolstech.org.ukでオンライン・ディスカッションを開きます。ぜひご参加ください。ツイッターでは#schoolstechというハッシュタグで議論できます。
テクノロジーがどのように教育を変えていくか。そのことについて、真剣で知的な議論をかわしましょう。私はみなさんが何を語るか、知りたいと思っています。

私たちが必要としているのは、テクノロジーが学校・教師・生徒に与えてくれるものを最大限活用した、現代的な教育システムです。このシステムでは、創意に富む実効的な方法でテクノロジーが使われ、若い人が未来のために必要な知識と理解、スキルを身につけることができなければなりません。また、テクノロジーの進歩はまわりのもの全てを変えていきますが、その進歩を受け入れることができるものでなければなりません。繰り返しますが、テクノロジーの進歩はあらかじめ予期することはできないものです。

BETTのようなイベントは、テクノロジー産業のもっとも優れたショーケースとして、とても重要です。ここでは、今後可能になるもの、すでに実現されたものを見ることができます。
みなさんの洞察とアイデアに、専門知識と経験に期待しています。ぜひ、ここで得たテクノロジーを学校に持ち帰り、生徒とともに試してみてください。

この場に呼んでくださったBETTにもういちど感謝を。どうもありがとう。今日がみなさんにとって、良い探求の日でありますように。

(了)

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